2020年
4月
15日
水
令和2年度改正意匠法による保護対象の拡張と注意点
4月1日より改正意匠法の一部が施行され、保護対象が拡張されました。
これまで保護されなかったもので意匠権を取得可能となるため、関係する業界の方は、無用な争いとならないようご注意ください。
新たな保護対象は大きく下記の3つです。
(1) 建築物
(2) 内装デザイン
(3) 物品に記録・表示されていない表示画面・操作画面
上記(2)は、店舗イメージの差別化に有効な権利となりますが、店舗としてのブランドイメージを裏付けるものとなるうえに、そのイメージをフランチャイジーに維持させる根拠としても使えそうです。上記(3)は、ウェブページやアプリ起動用のアイコンなども対象となり、ウェブサービスの発展著しい昨今、基本的なもので意匠権が取得されると、自社のサービス展開に大きな制約ともなりうるため、プラットフォーム企業などに先取りされてしまわないか注意が必要です。
2018年
2月
28日
水
AI IoT時代に生き残るための知財活用のあり方
2018年2月22日に、ウィンク愛知において、私も所属している株式会社公陽堂との共催企画の知財経営セミナーを実施致しました。
今回のセミナーの要点は、階層を意識して知財戦略を策定するということにありました。AI IoT時代における産業構造と、従来の日本の産業構造の大きな違いは、垂直統合型から水平展開型に切り替わるということではないでしょうか。そのような変化の中では、「階層」というのをしっかりと意識しておくことが必要となります。そのような観点から、久納と私が考える階層を意識した知財戦略について、導入部分のみとなりますが説明させて頂きました。
弊所および株式会社公陽堂は、2名のMBA弁理士がタッグを組んで、知財業界に戦略論をしかっりと定着させる取り組みを行って参ります。
今回、私共の新たな取り組みに多くの方が参加頂き、大変感謝しております。
また、セミナー後に様々なご感想を頂き、私達としても今後もこのような取り組みが必要であることを更に強く思いました。
今後も、皆様のご期待に添えるよう全力で取り組む所存でありますので、ご不明な点やご質問などございましたら、何なりとお申し付けください。
2018年
1月
30日
火
フォードの自動運転パトカーの出願
自動車業界では、自動運転について注目されていますが、先日も米国のフォードモータースから自動運転パトカーに関連する出願があったというニュースが出ていました。
技術的な面については、別のブログに記載することとして、ここで注目したいのは、特許請求の範囲の記載内容です。
今回のフォードの出願である、US2018-18869のclaim1を見ると
「1. A method, comprising: obtaining, by a processor associated with an autonomous vehicle, an indication of violation of one or more traffic laws by a first vehicle; maneuvering, by the processor, the autonomous vehicle to pursue the first vehicle responsive to obtaining the indication; and remotely executing, by the processor, one or more actions with respect to the first vehicle. 」とあります。
日本語に直すと、
「自律車両に構成されたプロセッサによって、第1の車両による1つ以上の交通法違反の表示を取得するステップと、
前記指示を得ることに応答して前記第1の車両を追いかける自律車両を前記プロセッサによって操縦するステップと、
プロセッサによって、第1の車両に関する1つ以上の動作を遠隔的に実行するステップとを含む。」
となり、自律車両のプロセッサの処理方法が権利範囲となっています。
つまり、上記処理は全てプロセッサが行うということになっています。一瞬、自律車両の中のプロセッサがやるのか?と思ってしまいます。
日本の自動車の出願では、プロセッサ(演算処理装置)の処理方法を記載することは珍しいと思います。今回の発明の場合ですと、
「第1の車両による1つ以上の交通法違反の表示を取得するステップと、
前記指示を得ることに応答して前記第1の車両を追いかける自律車両を操縦するステップと、
前記第1の車両に関する1つ以上の動作を遠隔的に実行するステップと、
を含む制御方法。」とする場合が多いと思います。
このとき、プロセッサは出てきません。
しかし、この状態で出願すると、米国の出願では、制御に関して、「どこが」、「何をする」と言う点を明確にするように補正させられることがあります。米国は、主語に対してうるさい国というイメージです。米国出願の基礎となる日本の明細書上でも、制御装置はECUで、ECUのCPU(プロセッサ)がこの処理をするなど、「どこが」、「何をする」を明確に記載しておかなければ、補正できないこともあり得ます。
この点は、Iotのクレームには大変重要になってきます。つまりサーバのプロセッサで処理するのか、あるいは端末側のプロセッサで処理するのか、あるいは機器側のプロセッサで処理するのかです。もし限定する必要がないのなら、どこにあってもよいなどの記載も必要です。今回のケースでは、「自律の警察用車両コントローラー300」のプロセッサが処理を行うようですが、0022段落に「Autonomous police vehicle controller 300 may be installed in, equipped on, connected to or otherwise implemented in autonomous police vehicle 110 in scenario 100 and autonomous police vehicle 210 in scenario 200 to effect various embodiments in accordance with the present disclosure.」とあり、
システム100の自律警察車両110に内蔵されても、装備されても、コネクトされても何でもよいと記載されおり、プロセッサはコトンローラの中にあるが、コントローラはどこにあるかは特に限定されない形になっております。
こういった細かい手当が米国出願では必要ですし、あまり日本では気にならない「何処が」「何をする」という、いわば主語と述語の関係を気にするのが米国出願を意識した際には必要です。Iot関連の出願は、構成が複雑になるため、この点を意識したいと思います。
2018年
1月
30日
火
セミナー案内
2月22日に名古屋のウィンク愛知で知財経営セミナーを開催致します。
今回は、株式会社公陽堂という知的財産専門のコンサルティング会社との共催で行います。
株式会社公陽堂の代表である久納は弊所でも所属頂いており、私の経営大学院の先輩でもあります。
兼ねてより、弁理士+MBAという変わり者2名で、何かしら時代を動かすことをやっていきたいと思っておりましたが、この度このような形でスタートを切ります。
新規事業を進めるにあたっては、知財の面で注意すべき事項が数多くあり、その見落としが事業の継続を妨げる場合もあります。そのあたりを解説させていただく予定です。ご興味をお持ちの方は、下記URLからお申込みいただくか、office@ktsip.com又は公陽堂へ連絡頂ければ幸いです。
AI, IoT時代に生き残るための知財活用のあり方
~新規事業において失敗しないための知財戦略を知ろう~
https://www.ktsip.com/japanese-home/seminars/
2018年
1月
11日
木
Iot関連の特許出願の注意点
最近第4次産業革命としてIotという言葉が目に着きます。様々の物がインタ―ネットに繋がるという時代に来たということですが、昔からインターネット経由で遠隔操作する物はたくさんありました。こういった製品を発明として特許出願する場合の注意点について、特許庁から審査基準の補完について昨年3月に発表されています。
36ページから、より具体的な例が示されておりますが、
38ページには、請求項1が
「配車サーバと、配車希望者が有する携帯端末と、無人走行車とから構成されるシステムであって、 配車サーバが配車希望者から配車位置を指定した無人走行車の配車依頼を受け付けると、前記配車希望者に 対して無人走行車を配車することを特徴とする、無人走行車の配車システム。」
となっている発明については、発明に該当しないとあります。
その理由として、
「情報処理は特定されておらず、無人走行車の配車という使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工を実現するための具体的手段又は具体的手順が記載されているとはいえない。。そのため、請求項1に係る発明は、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって使用目的に応じた特有の情報処理システム又はその動作方法を構築するものではない。」
とあります。
要は具体的処理方法の記載がクレーム(請求項)に記載されていない発明は、人為的な方法をつかったビジネスモデルと同じだから特許にしないと言っているように思えます。従って、Iot関連の発明においては、「使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工」が請求項にある程度記載されていないといけないということになります。どの程度「特有の情報の演算又は加工」を特許請求の範囲に記載するかは、先行技術との関係などを吟味して検討することになります。
もう1点、Iot関連の発明は、侵害発見という観点から少し注意が必要となります。インターネットに接続する機器の場合、サーバなどを含めた全てのシステムを自社で実施するとは限らないからです。つまりシステム全体の中で、端末側の処理、サーバ側の処理、機器側の処理などそれぞれが存在し、全てを同じ会社が行うとは限らないということです。裏を返すと、システム全体の処理として請求項を記載しても、それら全体を実施する者はいないかもしれません。そうすると、折角権利を取得しても自社の開発成果を十分に保護できるとは限りません。
このような場合、システム全体が特徴を持つ中で、端末、サーバ、機器のそれぞれについても何か特有の処理をしていないか検討することが重要です。そして、その中で、侵害発見し易い発明を抽出しておくことが重要です。
また、米国にはAlice判決という厄介な判決もありさらに注意が必要です。
私の性分で、人に言うだけでは気がすみませんので実際に自分も工作キットを買ってきてIot機器を作ってみました。オープンソースを活用すれば、比較的簡単にできるものもあります。エンジンの設計や自動車の構造・制御については会社員時代に散々やってきましたが、こういった少し違った分野の研究を明細書に活かすことも弁理士の仕事だと思います。